ニョイスミレ類 地上茎あり

ムラサキコマノツメ (紫駒の爪)

撮影地:群馬県片品村。尾瀬ヶ原(2003.6.27)
 尾瀬にはミヤマツボスミレも自生していますが、このムラサキコマノツメも見ることが出来、かなり個体数は多いです。写真のものは葉が丸く花色も濃くて典型的なタイプだと思います。
生育地 本州の中部以北。分布はミヤマツボスミレに準じますが特に湿原や湿地に多いようです。
開花時期 6月〜7月頃
草  丈 10〜30pくらいとニョイスミレよりやや大柄。
花の状態 花色淡紅紫色〜やや濃い紅紫色。下弁や側弁には赤紫色の脈が密に出る。
花柄は長く立ち上がります。
花形直径1p前後。やや扁平気味に花弁が開く。
側弁側弁の基部には細かい毛がある。
距 白色〜淡緑色で、短くぽってりしている。
萼片緑色。先端は尖る。毛はない。
葉の状態 葉形円形。基部は重なることが多い。
葉表緑色。微毛がある。
葉裏緑色。希に紫色を帯びるものもある。
托葉全縁、またはまばらに鋸歯がある。
備   考 ●ニョイスミレの湿原変異型で、湿地や湿原に多く分布しています。背丈が意外と高くて30pくらいになり花柄も長くなるのも特徴です。葉は丸く基部は重なることが多い。葉の丸い形が「キバナノコマノツメ」に似ている こと、花が紫色という点から「ムラサキコマノツメ」となっているようです。
●同じニョイスミレの品種には「ミヤマツボスミレ」がありますが、こちらは、葉先がやや尖ります。また花柄は長く立ち上がらず背丈も低いです。
 
★「増補改訂 日本のスミレ」(いがりまさし著) にはムラサキコマノツメの表記はなく「ミヤマツボスミレ」だけが載っています。書かれた特徴には葉はほぼ円形、花は淡紫色とされています。
 また、その後に出された「尾瀬植物手帳」ではムラサキコマノツメはミヤマツボスミレの紫色の花に対する名前で同種扱いと書かれています。この本にもいがりまさしさんが協力していますので、間違いはないものと 見ていますが、いろんなサイトを見ても写真と名前がバラバラで統一性がなく混乱傾向でかなりあやふやになっているようです。
 
 私的な意見では、キバナノコマノツメの葉がウマの蹄ににているというところからついた名前なら、ムラサキコマノツメも葉が円形もしくはキバナノコマノツメのようなやや扁平した円形の葉にあてはまるものと 考えますので、このページに掲載しました個体は該当する物と思われます。
 さらにいえば、少なくとも尾瀬ではムラサキコマノツメとミヤマツボスミレと思われるタイプのものはほぼ同居しており、両者の違いも比較的はっきりしている感じがします。ただ中間的な物もあるのも事実で、どちらも ミヤマツボスミレと一括りでもいいような気もします。しかしながら一括りにするにしては名前がまったく別物という印象をあたえるものであり、命名した方の真意がよくわかりません(^-^;) 
 また、山田隆彦著の「スミレハンドブック」には本掲載の写真と同じような個体があり撮影地は尾瀬となっていましたので、ひとまず別品種扱いとして本図鑑に掲載することにしております。

花のアップ

淡紫色で側弁には毛があります。 距は白くて丸短い。
葉の部分

葉は円形で基部は重なることが多いです。